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人生迷子

 オリジナル小説を書いたり、二次創作を書いたり、PBWのマスターとして活動したり、小説の感想を書いたり、日記を書いたり――要するに文芸するブログです。

オリジナル小説 の記事一覧

全自動悪夢配信装置ってなんぞ

2013.08.08 (Thu)
テーマ:『全自動悪夢配信装置』

 男は復讐に取り憑かれていた。仕事で同僚に裏切られ、社会的地位も家族も失ったのだ。縋り付くものがなくなった時、彼はそれでも強い人間だった。決して自殺や短絡的な方法に出なかったのだ。
 だが、それが一番の不幸だったのかもしれない。
 強い心は無敵ではない。摩耗して壊れていってしまう。
 狂気に走るしか道が残されていなかった。そんな彼が狂い果てた先で、技術者の力を発揮して生み出したのが『全自動悪夢配信装置』だった。
 彼はその装置を使って、同僚を悪夢に誘い、最終的に自殺にまで追い込んだ。その結果に満足した男は潔くこの世を去った。もう生きる意味などなかったからだ。

 問題は彼の死後である。
 『全自動悪夢配信装置』をシステムに変えて配信する者が現れた。
 スパムメールと同じ要領で、特殊な加工をされた文面を拡散するのだ。そのメールの文章こそが悪夢のキーとなる。
 文章をただの文字の集まりである、と考える人は居ないだろう。文章には流れがある。その流れは例えば、物語になったり恋文になったり、人々の想いを動かしたり、あるいは伝えることができる。
 男は趣味で心理学を学んでいた。その知識を織り交ぜてできたのが、メールの文章である。
 読めば人々の無意識に囁き掛け狂気を呼ぶ。それは夢の中で確かな形となって襲ってくるのだ。

 皆様はどうだろうか?
 毎日のように押し寄せるスパムメール。
 ちょっとした軽い気分で開いたことはないだろうか
 そして、悪夢に晒された経験はないだろうか。
 ひょっとしたら、それは男の残した悪夢を呼ぶ『悪魔の文章』が原因なのかもしれない。
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三題噺書いてみた

2013.08.07 (Wed)
ワード:『桜色』『クリスマス』『人工の主従関係』とオマケで『ダイオウマンボウ』
ジャンル:『ラブコメ』

 お嬢様はわがままだ。
 ご家族が海に行かれた時は「おみやげはダイオウマンボウで」などと言うから潜水艇を用意することになって大変だった。イカではない辺りに、お嬢様の非凡なる発想力を垣間見た気もするが、僕たち使用人に迷惑を掛けるような発想をしないでほしい。
 今回は何を所望したかと言えば、
「桜が見たいわ。満開のね」
 という訳である。
 ちなみに、今日は12月25日。世はクリスマスで賑わっている。死ねばいいのに。僕は仕事だ。
「お嬢様、桜は春に咲くものですよ」
「そんなの知ってるわ。馬鹿にしているの?」
 お嬢様はベッドの上で半目になって睨み付けてくる。
「……いいえ、滅相もございません」
「それで貴方は私を満足させてくれるのでしょう? 期待しているわ」
 期待されてしまった。やれやれだ。
 僕がお嬢様付きになってから、わがままが増したというが、きっと嫌がらせをしたいだけだと思うのだが。
 さて、期待されたからにはどうにかするしかない。
「まあお嬢様も鬼ではありませんし。さて、寝室の窓から眺められる壁に桜でも描きますかね」
 所要時間は二時間。遠目ではそこそこの芸術に見える筈だ。使用人一同で頑張った傑作である。みんな全くあの小娘は、と溜め息をついた悪態をついたり忙しい。それでも手伝ってくれる辺り、お人好しだ。ほとんどの使用人は理由を見付けて逃げるというのに。
「お嬢様は敵が多いですからね、あんな身体で、あんな性格ですし」
 お嬢様はわがままだ。でも、それがあの方の不器用な自己表現なのだから、僕はすべて叶えてみせるしかない。僕が彼女に仕えるのは、旦那様に命令されたからではない、と証明するために。
 そう、血の通った人工の主従関係だと理解してもらうために。
 いつかきっと信頼して頂いて、幼い頃の微笑みを取り戻したいから。
「まるでだめね。描き直し」
 報告してみると、顔を背けたままそう言われてしまった。横顔から見える頬が桜色に染まっているのを見て、回り込もうとすると、気配でバレたのか寝室から追い出された。
「やれやれ」
 お嬢様の笑顔まであと少し。
 僕は明日もきっと、わがままに奔走する。

太一の箸

2013.08.07 (Wed)
※ただのネタです


 荒垣太一(あらがきたいち)は、寿司が好きだった。といっても、マニアを語れるレベルではない。週末の休みの贅沢に寿司屋を選ぶという程度である。全国の店を回って、批評したりなどは考えていない。
 そんな彼が出張帰りに自分へのご褒美と、たまたま入った回転寿司は戦場だった。
「おっ、こいつは新入りか。ふんっ、腑抜けた顔をしているな」
 店に入ってすぐに、強面の中年に鼻で笑われた。意味不明である。
 外観は蔦に絡まれた暖簾が実に古臭いイメージを与えたものだが、店内は回転寿司チェーン店のようなモダンな雰囲気があり逆に違和感を抱いた。
「ど、どうも」
 入り口の中年に頭を下げながら奥へ進む。
 ――そこは戦場だった。
 銃声が響く訳ではない。硝煙の臭いが立ち込めている訳ではない。
 ただただ、剣呑で鋭い空気がひしひしと感じさせるのだ。
(なんなんだ、この回転寿司の回る速度は!?)
 超高速で回るレーン。目が回るような速さで、手を伸ばすのもすら躊躇う。
「おいおい、ビビったのか、新入り」
「そりゃあ、まあ……これじゃあ、皿を取れないですよ」
「はっ、これだから新入りは。見てみろ」
 中年の指差す先には、スーツをびっしり着込んだ眼鏡の青年が居た。青年はカウンター席に座って、無言で箸を構えている。
「なっ!?」
 ずっと目を離さなかった筈だ。それなのに、気付いたら、青年はサーモンを箸に捕らえていた。
「相手が早いなら、その速さに合わせて取ればいい、それだけのことだぜ」
 いや、寿司を食べるのに必要な技術ではないだろうに、と突っ込める空気ではない。ここで食事にありつくには、まずはいかに寿司を捕らえるかを考える必要があるということだ。

 太一は寿司好きとして引く訳にはいかない、と箸を手に取る。
「まあ、待て、カウンター席はお前には荷が重い。まずはファミリー席で大きなスペースを使え」
 中年に言われて、ファミリー席に座り、箸を構える。
「……ふん、最初からカウンター席に座ろうなどと、世間知らずもいいところです。まあファミリー席でも無理でしょうけど」
 その際に、青年が小馬鹿にするように言ってきたが、なんとか堪える。カウンター席の難易度を理解できてしまったからだ。
 確かに肩がぶつかり合うカウンター席は満足な動きを取れない。目の前に流れてきた寿司のみにしか手を伸ばせない。
「ここなら、俺だって」
 太一は祖母に鍛えられた箸捌きでイカに狙いを定める。
「取った――なに!?」
 しかし、箸で掴んだイカは脆く崩れ去る。
 当たり前のことだった。高速で動く物体に対して、静止を掛ければ大きな負荷を与える。横から掴んで取ればいい、などという甘い考えは普通の回転寿司ならば許されるだろう。だが、この戦場では甘えに過ぎない。
「くっ……ならどうすれば。いや、そうか、速さに合わせればいい、そういうことなんだな。だから、スペースを使え、と言われたんだ」
 太一は勘が良かった。
「行くぜっ!」
 もう一度、イカへ。
 ただ真っ直ぐに伸ばすのではない。イカは横へ流れていく。ならばその流れの速さに合わせる。そう、金魚掬いに近いところがある。相手の動きに合わせて、負担を少なく掬い上げる。
「俺ならできるっ!」
 己の心を鼓舞して、イカのスピードを理解したその時、
 ――荒垣流箸技『回転箸』。
 掬い取った寿司を手首の捻りで回転させる。一方向に掛かる負荷を全体方向に分散した。
「あ、あの技は!?」
 驚愕する中年の前で、
「取った……!」
 遂にイカを完全に捕らえた。
 祖母から教わった百にも及ぶ箸技、まさかそれが役立つ日が来ようとは……、いや、確か祖母は臨終の際に言った。
『太一、お前はいずれその技を使う時が来るだろう』
 きっと、予期していたのだ。この日、ここを訪れるのを。寿司を求めれば、いずれこの至高の戦場へ至るのだと。
 勝ち取ったイカは、未だかつて味わったことがない美味だった。

 しかし、彼はまだ入り口に辿り着いただけだと気付いていなかった。
 これから待ち受ける回転寿司の高速レーン機動は、こんなものではない。ただ横に速く流れていくだけに過ぎない今の難易度。そう、初級もいいところなのだ。

 踊る回転寿司、箸技四天王との激闘、生き別れの兄との再会そして死闘、祖母の想いの真実――『太一の箸』乞うご期待ください。
 続きません。
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