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人生迷子

 オリジナル小説を書いたり、二次創作を書いたり、PBWのマスターとして活動したり、小説の感想を書いたり、日記を書いたり――要するに文芸するブログです。

『白ゆき姫殺人事件』の感想

2015.03.23 (Mon)
 湊かなえ同名小説の映画化作品。映画化やドラマ化されているので有名な作者ですが、私は原作もメディアミックスを含めて、これが初めて観る作品です。
 そんな訳で、映画単体の感想を書いていこうと思います。

●あらすじ
 人里離れた山中で10か所以上を刺され、焼かれた死体が発見される。殺害されたのは典子(菜々緒)で、容疑者は化粧品会社のOL城野美姫(井上真央)。テレビディレクターの赤星雄治(綾野剛)は、美姫の同僚、家族、幼なじみなどに取材。典子が美姫の同期入社で、美人で評判だった一方、美姫は地味で目立たない存在だったことが報道され……。
(引用:シネマトゥデイ)

●感想
「ネット炎上ひゃっはー!」
 という話かと思ったら、単純にマスゴミの原因じゃなかろうか。テレビニュースがあれだけやらかしているのだから、ツイッターはあくまで情報拡散を早めただけで決定的な要素では無かったような……。まあネットの特定厨が居るからこそという話かもしれませんが、それでもネット要素は取って付けたような感じがする。
 ステレオタイプの悪人によって回る話というよりは、「自分にとって都合の良い現実」を生きる人々の話。作品内のモラルが低く、悪人の敷居が高くなっており、私としては登場人物に「悪人」は見当たらなかったです。逆に「善人」もまた存在しない。
 しかし、物語が進んでいくにつれて、それがミスリードであることが分かる。人間は、見たく無かったことを忘れることはできる。しかし、見たくないものを見ないままでいることはできない。そして、あなたの見たいものが「誰かにとって都合の良い現実」にすり替えられている可能性がある。
 物語の構造としては単純ではあるが、そのメタ視点の構造を強かに利用した殺人事件という見方をすると、新しい切り口ではないかと思う。

 126分と最近の映画にしては長めで、退屈するシーンが出てくるかなと思ったが、最後まで飽きずに見れた。しかし、決してこの映画には驚きも興奮も感動も存在しない。作中の動画に「感情を表現した映像」という話が少し出てくるが、この映画の映像はその正反対。感情を徹底的に覆い隠す無機質な眼となって、視聴者に「傍観者の視点」を与えてくれる。

 私自身の作品の楽しみ方が拍車を掛けているところもあるが、どこまでも映画に入り込ませてくれない。「お前は無関係だ」と何度も突きつけられるのである。
 恐らくは意図したものだと思うのだが、私達(映画を見ている視聴者)の立ち位置を「匿名の誰か」にしたいのだと思う。
 その証拠に、作中の映像ディレクターである赤星雄治は、現在進行形で物語を動かす唯一の人間だが、内面で何を考えているのか表情に出さないし、声に出すこともない。無機質な文字としてツイッターに呟くだけだ。ネットリテラシーの低いいかにも俗物として描かれており、嫌な奴だし好きにもなれないが、ぎりぎりのところで彼は進行役として落ち着いている。
 遠回しに私達に訴えているのだ。

 これは、赤星雄治の物語ではない。
 そして、容疑者としてネットで叩かれる城野美姫の物語でもない。

 そう、あくまで今作は「白ゆき姫殺人事件」の物語ではなく解説なのだ。
 個人的に物語はキャラクターの人生だと思う。しかし、今作に生きたキャラクターはほぼ登場しない。過去を振り返る語り部たちが入れ替わりで現れて、それに無意味な誰かが反応返すだけだ。物語として機能する「生きたキャラクター同士」のやり取りは僅かな部分だけしかない。

 だったら、この映画は駄作なのかと言われたらそうではない。詰まらないかと訊かれたらそうではない。
 この映画を酷評した人間は、きっと高尚な人物か、あるいは物語として見てしまった方ではないかと思う。
 勘違いモノなどを読む人なら分かると思うのだが、「他人にはどう見えているのかよく分かるシーン」は、ただそれだけで、なんだか面白いのだ。


 これからこの映画を観るという方は、是非とも「感情移入しない傍観者」として観て頂きたい。
 さて、色々と語ったのだが、この作品で一番印象に残ったのが、「俺っ娘かわええなぁ」というのだから、私はどうしようもない奴ではなかろうか。

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