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人生迷子

 オリジナル小説を書いたり、二次創作を書いたり、PBWのマスターとして活動したり、小説の感想を書いたり、日記を書いたり――要するに文芸するブログです。

映画の感想1

2015.03.21 (Sat)
 ブログどころかツイッターも放置し過ぎな私ですよー。
 早速、本題ですが、映画熱が燃え上がったので、TSUTAYAに行って来ました。
 借りてきた作品は以下の4つ!

『GODZILLA 2014』
『シュガー・ラッシュ』
『トランセンデンス』
『マレフィセント』


 そんな訳で、簡単に感想を書いて行こうと思います。

業務報告その8(宵闇)

2014.09.01 (Mon)
 もう二ヶ月程度の放置じゃ動じない、それが私です。
 納品報告ぐらいはちゃんとしろよって話ではありますが……。

●『ネバ着衣ディゾォルゥゥゥゥウウブ』納品完了
 もうタイトルからして可笑しいけど、いつも通りなので気にしたら負けである。
 というかこのタイトル、コピペしてこないと私でも正確に書けないから困る。
 内容に関しても、いつも通り。
 イッチーで真面目路線に走ると見せ掛けて、やはりこっち系に戻ってきてしまった。
 このシナノベも2本納品されており、参加者とプレイングの雰囲気から、内容自体の雰囲気も変わっています。これは、お馴染みのギャグ補正とシリアス補正が作用しており、私の異界の仕様です。
 どちらでも、今回の事件を引き起こした雨宮雫を倒すことができ、学院には一先ずの平穏が戻りました。ええ、華羅皇学院の変態率はますます上昇していますがががが。
 スライムくんなんて出たら、そりゃあ遊びますよね。
 今回は初めての方が何名かいらっしゃって、不安ではありましたが、とても楽しく書けました。改めて参加して頂きありがとうございます。

 最初からぼんやりとシリーズモノの構想はありましたが、最近(何ヶ月も間を空けておいて!)のシナノベでは、それがはっきりと表れるようになっています。
 果たして結末まで書けるのでしょうか。宵闇が続く的な意味で、私のモチベーション的な意味で、そもそも参加し続けてくださる方が居るのか的な意味で――な感じで、覚束ないです!


 Twitterにも顔を出してなくて、最近は空気になりつつある、そんなpotato_47でした。

書き進めている長編小説について

2014.07.09 (Wed)
 ブログを放置気味だったので、とりあえず最近書いている小説についてちょこっと紹介的なもの。
 その前に、お仕事の報告。

●宵闇幻影奇譚
 オープニングを公開して、プレイングも受け取ってリプレイを執筆中。
 (いつものことだが)久し振りで、感覚掴めず苦戦しています。
 納品は今回もギリギリになりそうで、申し訳ないです。


●長編小説について
 5月末に書き終える、6月末までには! と言いながら、まだ3分の1も書き終わっていない私の計画性の無さに絶望。
 内容はツイッターで少し触れましたが、『魔弾の射手』をベースに、『北欧神話』の用語とかちらほら出てくる銃と魔法のファンタジーです。
 タイトルはそのまんまで『魔弾の射手』。デア・フライシュッツと読むけど、そんなことはどうでもいい。
 内容を短くまとめると、「ヘタレ男が好意を寄せてくる女の子達に振り回されながら自己嫌悪に悶えたり死にそうになったりして、忘れられない過去と再び向き合い更生するまでの物語」である。こう言うと物凄く格好悪いけど、本当にそうなんだから仕方ない。格好良く誤魔化せば、「暗い過去に囚われた男が心優しい少女に心を救われていき、世界を巻き込む陰謀を阻止するため、そして己の過去と向き合うために奮闘するヒロイックファンタジー」だと思う。
 これだけではよく分からないと思うので、下にあらすじをまとめてみました。

●あらすじ
 魔法文明が魔法の源である魔素の枯渇に寄って廃れて約三百年。魔法の代わりに新たに人器と呼ばれる力が人々に宿り、人類は新たな文明の礎を築こうとしていた。
 世界中で国家連盟軍と反国家統合軍の戦争が続く中で、スルト村に住む少年エリクは、幼馴染の少女アルトと平穏な生活を送っていた。
 収穫祭と共に行われる射撃大会に出場することになった二人は、常日頃からライバル意識を燃やしており、その大舞台で勝負することを望んだ。
 人器は人の魂や在り方に従って形作られ、エリクとアルトは共に『銃弾』の人器を所持している。意志に従い自由自在に駆け抜ける様から『魔弾(フライ・クーゲル)』と呼ばれていた。
 魔弾の力で二人は順調に勝ち抜いていく。そして、二人を残して他の参加者は脱落した。
 エリクはアルトとの決着をつけるために、魔弾を放つ――自分自身の隠された想いすらも込めて。

 六年後――エリクの姿は戦場にあった。
 戦争を嫌っていたエリクは躊躇いもなく人殺しができる傭兵になり、戦場と拠点を行き来する毎日を過ごしていた。皮肉屋ではあったが明るかった性格も、子どもらしさを削ぎ落とすと共に大切なものを幾つも失っていた。何よりも意志に従う筈の七つの魔弾の内一発が、意志に逆らう『呪弾』と化していた。
 戦場で過酷な日々を送る中、難破した自由都市同盟の貿易船を発見する。船体の剥げた塗装から、反国家統合軍の偽装船だと分かり、陰謀の気配を感じて船内を調べることにする。
 貨物庫に隠されていたのは、白の棺桶。入っていたのは、ウェディングドレスに身を包んだ少女だった。

 少女はノルンと名乗り、傭兵であるエリクに世界樹の上に作られた『自由都市レーラズ』までの護衛を依頼する。
 『運命の花嫁』ノルンを中心に世界の在り方を変える陰謀へと巻き込まれ、その戦いの中でエリクは呪われた過去と向き合う強さを得ていく。


●登場人物
・エリク
 主人公。ヘタレの人でなし。鈍感では無いせいで女の子の好意に逆に息苦しい思いをするけど自業自得。
 本来は素直で明るい性格だったが、過ちを犯してしまいどんどんねじ曲がっていった。
 嫌いなものは自分。皮肉屋。自分の優しさすらも肯定できない臆病者。露悪的な言葉を使い他人を遠ざける。
 観察眼に優れており、他人の機微を読み取ることに長けている。どんなに歪んでも、根は優しく真面目で、だからこそどこまでも歪んでしまったと言える。真面目な人ほど鬱になる典型例。
 食事は栄養補給、趣味は無く、睡眠が唯一の娯楽。時間が余っている時はすぐに嫌なことを思い出すので酒に逃げる。
 感情移入のしやすい等身大の人間でも無ければ、誰もが憧れる英雄でもない。敢えて性格としては読者に好感を持たれないようにして、読み終わった後に物語の中で好きになってもらえる、そんなキャラを目指した結果がこれ。本当に好きになってもらえるだろうか。
 キャラ設定は最初から安定していて「ダークヒーローにもなれない独善」とか「こいつって本当に主人公か?」というのを念頭に置いて考えた。

・ノルン
 ヒロイン。無表情系銀髪幼女。12歳と聞くとなんかセーフな気はするけど、小学六年生って聞くと途端に犯罪臭がする。
 ただし感情は豊かで、身振り手振りで寧ろ考えていることが分かりやすい。
 人器の能力のお陰(原因?)で、年齢不相応の思考と知識を持つ。自己犠牲を厭わないが、それは自分を受け入れてもらうための手段であり、本人はそれに無自覚。わがままや自分の意見を言わないのも嫌われないため。奥底では、自由になりたいと思いながら、自立することで保護対象ではなくなり誰も愛してくれないと思い込んでいる。
 無表情の仮面を見破れば、保護欲を掻き立てられる存在ではある。
 なんだか主人公と同じく好かれそうにない気もするけど、きっと成長してくれると信じている。
 キャラ設定の時に、性格が一番紆余曲折した。明るくなったりアホの子になったり、捻くれたりかなりの毒舌になったり……こんなにも揺らいだヒロインは初めてである。ただ根本的なところには、「エリクの支えになれる存在」という考えが最初からあった。

・アルト
 エリクの幼馴染。いつか公開するプロローグを読んでもらえるとわかるが、ノルンよりもヒロインしている。
 完璧主義者。真面目で几帳面。男勝りなところもあり、エリクには異性を感じさせないライバルのような存在だった。
 エリクが大好きだが、関係の変化を恐れて冗談めかした態度でなければその好意を表に出さない。
 登場人物の中で一番自分が定まっており、精神的に大人。だから上二人に比べるとどうしてもまともに見えるけど、その通りだから仕方ない。
 いわゆる天才で要領が良い。自分の才能を鼻にかけることもなく努力を馬鹿にしない。唯一の欠点は、他人の機微に疎いこと。どうしても他人の考え方も自分の考え方に当てはめてしまい、そういう意味では『凡人の悩みがわからない天才』である。



●今後の予定
 一通り書き終わったならば、どこか投稿サイトに載せようと考えますが……本当にいつになるのやら。
 忙しいのにもそろそろ一区切りがつきそうですので、執筆のペースは早くなると思うので、あとは気力とモチベーションとの勝負です。長編は短編をたくさん書くよりもしんどいなぁと思います。

久々の日記というか現状報告的な何か

2014.05.16 (Fri)
 面倒臭がっていた『中二病ルイズ』のコピペ作業を終わらせたので、記念に記事タイトル通りの内容を書いてみる。本来であれば毎日更新とまではいかなくても、ネット小説と同じく週一ぐらいで更新するべきなのは分かっていますが、小説以外だと何を書いていいのやらです。
 自慢ではないですが、日記は書き始めた一日目で終わるタイプです。
 小説もプロットを書くようになってからは、プロットで満足してしまう悪癖であばばばばばです。そろそろ5年は経とうというのに、長編作品を一作も完結させていない現状は、本当に不味いと思っています。
 まぁ私の性格というかやり方というか、プロジェクトとかだと「頭脳労働だもんね、働いているもんね」と言い訳して、主に発想段階を担当して、考えをまとめたりアドバイスをしたりで、実作業は丸投げしちゃう系です。後は文章を書くのはそこそこにできるので書類作成に回って、作業すべてやってもいないの把握して、「ふへへ、私は働いてるんだぜ」という気分に浸っています。
 ……いえ、まあ、ここまで酷くないですけど。
 ただ頭脳労働だからって楽だと思われるのは心外ですけどね。
 ただしプログラマー経験のない(現場を知らない)システムエンジニア、てめぇはだめだ。
 機械屋や電子系の人も分かるとは思いますけど、実際に製作をやったことのない奴が書いた設計図なんてファンタジーワールドのマップです。どうしてだか、情報分野だと経験の浅い人間も設計の仕事が回るんですよねー。

 ……創作系のブログなのにエンジニアの話になってしまった。
 話を戻します。
 そんな訳で、各地で放置している作品についてとかを書いてみる。


●中二病ルイズ
 以前に存在していた二次創作投稿サイト『にじファン』に投稿していた作品で、どこかに投稿するにもエタるのでどうしようかと思い、このブログに投稿していました。今までに公開していたものはすべて投稿完了です。
 すべて誤字脱字などは当時のままです。手直しするぐらいなら書き直したいですし、何よりも当時の自分の文章というのを残すのも乙かなと思いました。
 一応は書き直す計画はあります。
 まずはルイズファミリー(ソフィア、セフィラ、フィーアとか)を削ろうかなと。彼らは中二病ルイズの中核になっていたので、リメイク版は別物になるのは確定的です。
 ルイズの中二病度をもっとあげて更に弱体化。爆発魔法に前向きで、アホ成分プラスのゴーイングマイウェイな少女にしようかと思っています。そんな些細なズレが原作の流れに大きな変化を与えていく、というコンセプトです。うん、だから根本的な設定すらも変わりますね。
 あくまで原作にない設定は使わない……という風にするつもりです。もちろん原作の設定を逸脱しないオリキャラとかは出すかもですけど。
 そんな感じで頑張っていますけど、いつになったら書けるかなー。
 期待しないで待っていてください。


●魔法学院の百合の花
 『ハーメルン』に投稿している百合小説。エタっているけどね。
 そもそもプロットを作らずに勢いだけでさっさと完結させようとしていたのですが、書きながら設定ができていって、その結果いつもの悪い癖で、適当に書くのが勿体なくなり、真剣にプロットを作り始めた結果、最後までの道筋が立って書く気を失った作品です。
 ええ、はい、ラストまでのプロットどころか本編完結後の番外編まで用意できていて……期待しないで待っていてください。ただまあ中二病ルイズよりは再開の可能性は高いです。


●PBW関連
 エリュシオンとバロックナイトイクリプスは引退。基本的に不規則な生活なので、明日の予定も分からず限られた執筆時間で書き続けるのは難しいなぁと思い断念です。
 宵闇幻影奇譚に関しては、途端に何もネタが浮かばなくって悶えています。何やら運営の頑張りで復活の兆しを見せているので、その流れに乗りたいんですけどね……と思っていたら、唐突にネタが浮かんだので、オープニングを書いてきます。


 現状はこんな感じです。
 長編も書いているのですが、これは書き終わったらまとめて投稿しようかなと思います。本来は五月末までに書き終わらせる予定が、余計なことに手を出したりしてしまい……うん、ええと、はい、六月末までには書き終わるといいなぁ。
 あとこの長編を執筆活動の区切りにするつもりでいます。
 真面目に小説大賞を目指すのもいいですし、PBWに専念してもっとシナリオ出すのもいいですし、ネット小説で気ままに連載するのもいいですし……と、そろそろ自分の中で小説の在り方を模索して、明確にしていこうかなとか考えています。

 とぐだぐだと書きましたが、小説の更新を待っている方には土下座を、PBW関連にお世話になっている方には感謝を捧げて、失礼をば致しまする。

第4話 ルイズの婚約者(4)

2014.05.15 (Thu)
<本編>
 ギトーの登場にそれぞれグループを作って談笑を楽しんでいた生徒たちは、素早く席に着いた。
 教卓に着いたギトーは静まり返った教室を見渡して満足そうに頷いた。

「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」

 大仰に名乗りを上げた教師に、才人は首を傾げた。

「あの先生ってそんなに有名というか凄い奴なのか?」

 隣で授業と全く関係のない本を読んでいるルイズに尋ねると、どうでもよさげながらも答えてくれた。

「微生物と同じぐらいには価値があるわ」

「……そうか」

 少なくとも今死ね、すぐ死ね、骨まで砕けろというまでの存在ではないことがわかった。しかしそれでも微生物。アイテムを使えばさようならだ。

「なんだミス・ヴァリエール。私の授業に文句でもあるのかね?」

 どうやら私語が聞こえていたらしく、ギトーが鋭い視線を向けてきていた。才人は思わず身を竦める。学生であれば見た目が恐い先生に睨まれると過剰に反応してしまうものだ。元の世界の体育教師の横暴さを思い出した才人は、やはりファンタジー世界でも教師は教師なんだろうなと思った。
 ルイズは本から顔を上げて嘲笑を浮かべた。

「何を今更」

 ただ一言返しただけでまた読書に戻った。相変わらずのルイズである。室温がぐっと下がったような気がしたが原因の主は気にしない。
 才人はそれに倣ってハルケギニアの文字の勉強を始めた。ルイズがきちんと教材を用意してくれたことには驚いたが、「はぁ? 文字も書けない下僕を連れて歩けって言うの? 今すぐ文字を覚えるか、今すぐ死ぬか選びなさい。そのぐらいの自由は与えてあげるわ」とのお達しでルイズはルイズだぜと涙を呑みながら紙とペンを受け取ったのだ。

 流石にギトーにもプライドと教師としての面子がある。関わり合いたくなくとも堂々と授業をサボられては、教師の立場から注意をしなくてはならない。そこでルイズに質問を投げ掛けた。

「最強の系統を知っているかね? ミス・ヴァリエール」

「わたしが最強よ」

「私は系統を訊いているのだ」

「そう、ならわたしの系統が何か教えてくださらないかしら」

「ぐぅ……」

 ギトーは返答に詰まった。
 当初は火の系統かと思われたが、どんなスペルを唱えても爆発になる魔法を果たして『火』に該当させていいのか今だ教師の間で議論が続いている。便宜上は『火』として扱うが、今のルイズの返しは「厳密にはどうなの? 高名なギトー先生ならおわかりなんでしょう?」という嫌味たっぷりなニュアンスであるため答えなければ逃げを意味する。そしてギトーはルイズを認めようとは思っていない。

 別にルイズが最強ではない、と言ってしまえばかわせるというのに既にルイズのペースに巻き込まれていたため、その言葉が出てこなかった。
 すっかりやり込められているギトーを見下すような視線が生徒から送られてきていた。あの『ゼロ』に言いように言われているのに何も言い返せないのか。いつもの尊大な態度はどうした。元々生徒から好かれていないため表に出た負の感情は大きく、ギトーを追い詰める。

「な、ならばその最強を見せてもらおうか」ギトーは焦ったように腰に差した杖を抜く。「遠慮せず私に放ってみたまえ」

 ルイズの気だるげな眼に感情が宿り爛々と輝いた。

「ほう、ミスタ・ギトー。愚かにもこの全知全能なるルイズ様に挑むのね。その無謀、死して後悔がするがいいわっ!」

 立ち上がったルイズと引くに引けなくなった憐れな教師を交互に見て、才人は制止の声を上げた。

「おいばかやめろ」

 もちろんギトーに向かってである。不気味な雰囲気で本来の年齢より老けて見えるが、まだまだ若いだろう。こんな馬鹿げた争いで大事な命を投げ出すのは不憫過ぎる。
 才人に続いてキュルケも止めに入った。

「先生やめてください」

 キュルケの横に座っていたタバサは無言のまま机の下に隠れた。
 しかしギトーはそれでも挑発を重ねた。

「さあどうしたミス・ヴァリエール。たかが『ゼロ』のきみだ、恥を晒すのを恐れて挑めもしないか」

「挑戦者が図に乗らないでほしいわ。きちんと自分の立場を理解しなさい」

 ルイズは懐に忍ばせたソフィアをギトーに向けて構えた。

「おいおいルイズ止めろって! あの先生だってちょっとばかしやんちゃがしたかっただけに違いないって! な? ここは大人の対応を――」

『ええい! ゴキブリの分際でマスターに意見するか!』

 才人の説得はセフィラの特攻によって遮られた。毎朝の訓練によって身体能力と危機感知能力が異様に鍛えられた才人は素早く躱し、そのまま教室を出ておっかけっこが始まってしまった。
 既にルイズとギトーの戦いを止められる逸材はキュルケしか残っていない。

「ルイズ、少し落ち着いて。あなたは最強よ。だから、ね? それを大人げも無く頭の固い大人に理解させる必要は無いでしょ?」

 才人然りキュルケ然り、ギトーに対して遠慮の無い物言いだが現状からいえば致し方なかろう。彼らはそれでも教室と一人の教師の命を救おうとしているのだから。
 ルイズとギトー以外にとって教室は既に極寒地帯だ。南極大陸も夢じゃない。

 固唾を呑んで事の推移を見守る生徒たちは、ルイズの爆発魔法を散々味わってトラウマに成り掛けているため、いつPTSDを発症してもおかしくはない。今は張り詰めた緊張感によってパニックになっていないが、ちょっとした切っ掛けさえあれば瞬く間に恐慌状態に陥るだろう。
 二人の体から精神力の奔流が迸り、空気中の魔力が荒れ狂った。

「我が『風』は最強だ。たとえ伝説の『虚無』すら吹き飛ばそう」

「虚無? あんなものわたしの敵では無いわ。ブリミル如きが編み出した魔法に縋る貴様なんぞに負ける要素は欠片も見付からないわね」

『ルイズ様……』

「ソフィア、殺さない程度に加減しなさい。肉片を散らしたら教室を掃除するのが面倒になって困るわ」

『……畏まりました。環境情報把握。威力調整。ルイズ様のご要望から『レクイエム』の使用を提案します』

「流石はソフィアね。仕事が速いわ」

 ルイズとギトー、二人が魔法を放とうと杖を掲げた――その時、教室の扉が開かれコルベールが現れた。
 珍妙ななりをしたコルベールに意識が向き二人のまとっていた魔力が霧散し空気へと溶けていった。
 コルベールは杖を構えるルイズを目にし一瞬鋭い気配をまとったが、すぐにそれを誤魔化すように咳払いをした。

「あやや、ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ」

 コルベールの登場に生徒たちは一気に力が抜けた。強張っていた体が弛緩し、体内に溜まっていた重い空気を吐き出していく。
 コルベールは様子がおかしい生徒たちに眉をひそめるが、それも誤魔化して畏まった態度をとって重々しい声音で告げた。

「えーおほん。皆さん、本日恐れ多くも先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が本日ゲルマニア訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」

 ルイズはギトーから戦意が喪失するのを感じ取りソフィアを納めた。窓の外を眺めて、ここに向かってきている姫の姿を思い浮かべ苦笑した。

「そうね……直接顔を合わせるのは随分と久し振りね」




 生徒たちが去った教室で、ギトーは苛立ちを教卓に拳を打ちつけることで発散させていた。その姿を見守っていたコルベールが諌めるように言った。

「ミスタ・ギトー、ミス・ヴァリエールを余り刺激しないでいただきたい」

 コルベールの言葉にギトーは眉をひそめた。
 憮然とした様子から返答を先回りしたコルベールは続けて言った。

「彼女は『異端』の二つ名を持つ危険人物です。生徒たちにはそれほど知られてはいませんが、教師である貴方には留意すると共に、できうる限りの配慮をしていただきたい」

 ギトーは溜め息をついた。

「どうしたのかね、ミスタ。入学当初はそこまで意識していなかったはずだが」

 コルベールは瞼を閉じ、かつての『アルハザードの悲劇』と『破壊の杖強奪事件』を思い浮かべる。
 入学当初は『異端』を余り意識していなかった。確かに警戒はしていたが、ただの噂、ただ誇張された情報なのだと考えていた。しかし彼女は、伝説の使い魔を召喚し、広場での戦闘で死者を出すことなく勝利を収め、学院長がフーケを使って企んだ計画にてその恐るべき力の一端を晒した。

 学院長があらゆる手段を用いて強化したゴーレムを単独で破壊してしまったのだ。古のマジックアイテムによって施された対魔法障壁によって並みのメイジでは傷一つ付けられず、物理防御も『硬化』の重ね掛けにより名剣すら歯が立たないほどだった。作製に協力したコルベールはあのゴーレムがどれだけの強度を誇っていたのよく理解していた。

 コルベールはかつての自分を思わせる眼をしたルイズを恐れていた。その恐怖をどう伝えれば正しく理解してもらえるか考えたが、学院長から事件のことを秘匿するように言われているため、言葉を濁すしかなかった。

「とにかくミス・ヴァリエールを挑発するような真似は慎んでいただきたい」

 ギトーは釈然としない様子ではあったが頷いてくれた。

「……こちらとて関わらずに済むのならその方が助かるのでね」

 マントを翻してギトーは教室を出て行った。
 たった一人教室に残ったコルベールは、かつて所属していた『魔法研究所実験小隊』のことを思い返した。
 両手の平を見下ろすと、今でも血塗れて見える。杖を振るい何人も焼いた。仕方なかったと言い訳するのは簡単だ。だが背負うと決めた。

「王立魔法研究所《アカデミー》は再び怪物を生み出してしまったのか……」

 炎蛇と呼ばれるコルベール。
 異端と呼ばれるルイズ。
 その二つ名を得るまでの過程は大いに違うだろう。だからこそ間に合うかもしれない。
 コルベールは教室の窓から生徒が王女を迎えるために整列し始めるのを眺めた。

「…………」

 ――願わくば私のような過ちがあらんことを。




 本塔の玄関から馬車の扉まで続く緋毛氈の絨毯の上に、トリステイン王国王女、アンリエッタが降り立った。
 ルイズへの迸る想いを押し込んで王女として完璧の笑顔を浮かべ、生徒たちの歓声に答えた。
 才人は綺麗な人だなと素直に見惚れたが、どうしてかルイズと似たオーラを感じて危機感も抱いた。主にトリステインという国の未来に。

「あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃないの」

 ルイズは隣でつまらそうに呟くのを聞いて、掲げていた杖をキュルケに向けた。

「聞き捨てならないわね。その言葉、撤回させなければ今すぐゲルマニアへ送り返すわよ。もちろん遺骨でね」

 キュルケは恐怖に身を竦ませた。

「な、なんでルイズがそんな過剰反応するのよ」

「理由を話すのが面倒だわ。だったら今すぐ消した方が早いわよね?」

「わ、わかったわよ。ごめんなさい、王女様を侮辱して」

「それでいいわ」

 ルイズは絨毯の上を優雅に手を振りながら歩く王女へ視線を戻す。
 後に控えていた才人は、ルイズの横顔を見て首を傾げた。
 いつもの高飛車というか理不尽というか、とにかく周囲を威圧するようなオーラが弱まっている。それに先ほどのキュルケへと怒った理由もよくわからない。今まで他人に一切気を使わなかったルイズが、たかだか自国の王女への侮辱如きでどうしてあんなにも過剰に反応したのだろうか。

 ルイズの顔を見ていると、目を見開くのがわかった。
 視線の先を追ってみると、行き着いたのは王女ではなく護衛についていた一人の貴族だった。羽帽子をかぶった凛々しい顔立ちの男で、見事なグリフォンに跨っている。

「髭が無い……」

「えっ……?」

 ルイズがポツリと呟いた言葉に才人は耳を澄ませる。しかしその後に言葉が続くことはなかった。
 髭の有無がそこまで重要なのだろうか。
 髭萌え? 流石はファンタジー、中々にマニアックなフェチである。いや、それよりもあんな感じのイケメンがルイズの好みなのか? ギーシュとは比べ物にならないほどのリア充オーラが漂っている……強敵だ。何がどう強敵なのかは不明である。




 ルイズは静かな自室のソファで、以前受け取った手紙類を見直していた。テーブルの上に並べられたすべての手紙に王女の花押が押されている。それらの手紙は幼い頃から続くルイズと王女の仲を保つために役立った文通の結果である。

『随分とありますね。アンリエッタ様はよほどルイズ様のことを好いていらっしゃるのですね』

 棚とテーブルを往復して手紙が入った箱を運ぶソフィアが最後の箱を置いた。

「そうね。意外にあるものね」

 ルイズから送ったものはテーブルに積み重ねられたものの半分もない。つまり王女がほぼ一方的に手紙を送ってきているのだ。
 昼間から夜になるまでランプと月明かりだけの薄暗い部屋で手紙を読み続けていたため、ルイズは目が疲れてしまった。一度手紙をテーブルに置き、ワインを取り出して飲んだ。

「タルブのワインはわたしを嫌っているのかしら……」

 胸に手を当てたルイズが深い溜め息をついた。

『ルイズ様、大丈夫です! ちっぱいはステータスです!』

「ソフィア勘違いしないで、わたしは小さいのを苛立っているんじゃないわ。大きくならないことに対して苛立っているのよ」

 ソフィアはフォローになっていないし、やはりルイズは素直ではなかった。

(そうよ、これは決して貧乳であることを嘆いているんじゃないわ。胸の成長についての研究で、タルブ産のワインが巨乳を生み出したという数々の事例を省みたことから、果たしてそれは万人に当てはまるのか……という趣旨の実験を行っているに過ぎないわ。べ、別にわたしは胸を大きくしたいわけじゃないのよ。そう、そうなのよ)

 暗い笑みを浮かべ、ルイズはワインを呷った。
 ソフィアが飲み過ぎですと止めてもルイズは勢いが止まるどころかぐびぐびと加速した。それを強制的に止めようとする才人と、止めようとして『マスターに汚い手で触れるなっ!』と切れるセフィラは、現在広場にて訓練をしている。

 顔が赤くなり始めたルイズであったが、ノックの音で酒を飲むのを中断した。
 初めに長く二回、それから短く三回。

「へぇ、ちゃんと覚えていたのね」

 ルイズはニヤリと笑うと立ち上がった。ソフィアを懐に納めてからドアを開けた。
 来客は真っ暗な頭巾をすっぽりとかぶった少女であった。しかし、ルイズはノックの仕方で相手が誰なのかわかっていた。

 少女は漆黒のマントの隙間から杖を取り出して、ルーンを唱え軽く振った。
 光の粉が部屋を舞う。ディテクトマジックで安全の確認をしているのだ。
 確認が終わると、少女は頭巾を取って微笑んだ。
 少女――アンリエッタ王女は、ルイズの顔を見てうっとりと表情を崩した。

「ああ、ルイズ! 愛しのルイズ! とても会いたかったわ! この再会の時をわたくしは一日千秋の思いで待ち続けていたのよ!」

 急加速のノンブレーキでハイテンションになった王女は、不敵に微笑むルイズに正面から抱き付いた。

「ええ、久し振りね。相変わらず元気なようで安心したわ」

 たとえ相手が王女でもルイズは変わらない。この態度こそ王女がルイズに惹かれた最大の理由である。
 王女はルイズを抱き締めたまま至近距離で顔を覗き込んだ。

「ああ、ルイズ! ルイズ! あなたは相変わらず凛々しくて素敵だわ!」

 ルイズはやんわりと体を離して、ソファに座り直した。王女はすぐに隣へ座る。触れ合うぐらいに近いがルイズは気にしなかった。

「ルイズの傍に居るだけで心が癒されるわ。欲の皮を突っ張った宮廷貴族の相手はとても疲れるのよ。馬鹿だし、無能だし、いつまでも過去の栄光に縋ろうとする……。常に革新的なルイズとは大違いなのよ。保守という段階を超えて、あれではただの利己主義ですわ。……誰もこの国の未来など考えていないのよ!」

「そうね。トリステインは今のままではいつまで経っても他国の顔色を窺わなくては生き残れない小国のままでしょうね」

「ああ、ルイズだけよ、わたくしのことを理解してくれるのわ! 無能共はわたくしのことを刹那主義などと下して実権を奪っていくのよ!」

 ルイズは二人分のワインを注ぎ、王女にグラスを手渡した。

「美味しいですわ。流石はルイズ、ワイン選びの慧眼も見事ですわね!」

 ワインを飲みながら王女の胸をちらちらと見る。大きい。何故なの? どうしてそんなに成長しているの? ブリミル……貴様がわたしの邪魔をしているの? そ、そうね。きっとそうに違いないわ。せめてもの負け惜しみにわたしの肉体の成長を妨げているのね!

 酒の力と王女の胸のインパクトで思考が空転。
 そんな間にも王女の話は続く。

「――ルイズ! ルイズならわかってくれるわよね! 今こそトリステインは立ち上がる時ですわ! ルイズの力とわたくしの力が合わされば敵なんて皆無よ!」

「ええ、わたしに敵など居ないわ」

「そうですわ。誰もかれもルイズを過小評価して、ああ無能無能無能っ! 役立たずのゴミ虫ばっかり! アミアンの包囲戦にてきっちりとわたくしの指揮能力は理解させたはずなのに、どうして総司令官を任せてくださらないのかしら。それどころか戦略議論を交わしても世迷いごとで片付けてしまうのよ! きっとわたくしがルイズの教えの元で成長したから馬鹿共には高度な戦略が理解できないに違いありませんわ!」

 アミアンの包囲戦とは、ただの宮廷ごっこから始まったルイズと王女の凄まじい戦いの一つである。当初は宮廷ごっこによる姫と貴族のラブロマンスであった筈が、二人の化かし合いとなり、やがて宮廷の派閥争いへと発展し、最終的には王城を用いた大規模な反乱へとなった。もちろんすべては物語であったが、侍従のラ・ポルトや暇人を発見しては巻き込んで、本格的な模擬戦へとなった。

 立てこもるルイズに慎重に攻める王女。幼いながらも軍神とも呼べる二人の的確な指示により、戦いは日が暮れるまで続いた。最終的に鉄壁を誇るルイズの要塞を犠牲無しに陥落させたアンリエッタは、参加者から『奇蹟《ミラクル》のアン』や『|魔術師アン《アン・ザ・マジシャン》』などと持て囃された。

 しかし王女は周りの評判に対して、

『わたくしは古代からの用兵術を応用しただけですわ』

 と侍従のユリアンに漏らしていた。
 それぐらい王女にとっては初歩的な作戦だったのだ。だからこそルイズの盲点を突けたのもある。
 どこかのポワチエさんが戦略議論を交わそうとしていたりしていなかったり――という噂もあったりなかったり。

 アミアンの包囲戦以降はマザリーニに「自重してください」と言われたので、水系統魔法と爆発魔法の直接戦闘などを隠れてやっていた。
 ルイズの謎のカリスマがアンリエッタを戦姫へと成長させてしまったのだ。しかし、誰も王女の能力を認めようとはしない。今だ類稀な戦術眼は世には眠ったままなのである。
 しばらく王女の愚痴は続いたが、頃合を見てルイズは口を挟んだ。

「それで、ここに来た目的はなんなのかしら。あなたがわたしの顔を見に来たというだけで理由は充分だけど、わたしの認識が正しければあなたは無駄な行動はしないわよね?」

 饒舌だった王女の舌がその高速口撃をピタリと止まる。
 王女はテーブルに広げられていたルイズ宛の手紙が目に入り「ルイズはもうわかっているのね」と呟いた。

 ルイズは無言を返答にした。
 王女は一度覚悟を決めるために頷いて、沈痛な面持ちで語り始めた。

「今日ルイズに会いにきた理由は、もちろん下らない愚痴を聞かせるためではありませんわ。……頼みたいことがあるのよ」

「聞くだけ聞くわ」

 王女は一呼吸置いてから言った。

「結婚するのよ。わたくし」




 厳しい訓練を終えてルイズの部屋へ戻ってきた才人であったが、ドアの前でこそこそと怪しい者が居るのを発見した。すぐにセフィラへ目配せすると、才人はデルフを抜き放ち駆け寄った。

「おいっ! お前ら何を……ってギーシュにアルマンじゃないか。ルイズに用でもあるならさっさと入れよ」

「さ、サイト!」

「えーと、ああサイト……ぼくは無実」

 セフィラに扱かれた後だったため若干気性が荒くなっていた才人は、ドアの前の二人を室内に蹴り飛ばした。
 二人が痛みに悶えているのを尻目に才人は部屋に入ると、そこはなんと修羅場でした。

『ふっ、アンリエッタ様のルイズ様への気持ちはその程度だったということですね』

「ああ、ルイズ誤解しないで! 確かにあの方を愛しているけどルイズが……その――」

「もういいいわ。わかっているから」

「流石はルイズですわ! わたくしのことならなんでもわかってくれる! 最愛のお友達!」

『むむっ! 例え王女であるアンリエッタ様が相手であっても私は負けませんからね!』

「ソフィアが一体何を言いたいのかはわからないけど、大丈夫よ。私は別にその程度のことで見捨てたりはしないわ」

 ルイズが柔和に微笑んでいるので、才人は恐怖に身震いした。普通に笑ってるぞ! あのルイズが! いつでも他人を見下す不敵な笑みがデフォなルイズが! もう国宝モノである。
 ルイズを間に挟んで睨み合う王女とソフィア。騒がしくしていたためか、あるいは才人になんて興味がないのか今だ「おかえり」の一言もない。
 才人に蹴飛ばされた二人は、こちらにやっと気付いた王女に跪いた。

「まさか先ほどの話を……」

 王女は口に手を当てて焦ったように言った。
 先ほどの話というのはルイズを巡っての痴話喧嘩のことだろうか? と才人は首を傾げた。確かに一国の王女ともあろう方が百合というのは色々と不味いかもしれない。こちらの価値観が今だ把握し切れない才人には判断が難しかった。

「というかなんでルイズの部屋に王女さまが?」

 うはぁルイズとはまた違った美人さんだよぉ、という内心の興奮を、でもオーラがルイズと一緒だよぉという恐怖で抑えながら言った。
 ルイズは手を顎に当てて考える素振りを見せてから一同を見回した。

「アン、ちょうどいいわ。こいつらにも手伝わせましょう」

 ギーシュは立ち上がると造花の杖を颯爽と構えた。

「お任せください姫殿下! その困難な任務、このギーシュ・ド・グラモンが見事達成して見せます!」

「えっと、その、ぼくも頑張ります」

 俄然乗る気のギーシュと、完全にやる気の無いアルマン。
 才人はなんの話をしているんだと混乱が増すばかりである。
 ルイズは不敵に笑うとソフィアを構えた。

「そうと決まれば二人とも、さっさと失せなさい。任務のための仲間を足手まといに変えたくないわ」

 暗に「すぐに部屋を出て行け、そうすれば無断で立ち聞きしていたことも許可無く入出したことも許してやろう。でなければ爆発させる」とルイズの瞳が言っている。
 ちなみに才人に対しては「お仕置き確定ね!」という意味しかない。ちなみに拒否権は無い。

 二人は見事な敬礼をルイズに送ると、すぐに退室していった。才人もまぎれて逃げようとしたが、セフィラがドアの前で輝いていたのですぐに踵を返した。
 静かになった部屋でルイズはどっしりとソファに腰掛ける。話に区切りのついた王女は才人の元へやってきた。

「あなたがルイズの使い魔さんですね。お話は聞いておりますわ。どうかルイズの力になってあげてください」

「え? あ、まあ……そりゃあなりますけど」

 だってならないと仲間に『すまんなゴキブリ。誤射した』と言って後ろから撃たれるし。
 王女は満足そうに頷いた。

「ルイズ、すべてあなたに任せましたわ。ルイズ一人でもきっと可能なことだと思いますが、念のためにルイズの婚約者であるワルド子爵と、ピポグリフ隊のローレンス隊長を護衛に付いてもらうようにお願いすることにしますわ」

 ルイズは眉をひそめた。

「婚約者なんて過去の話よ」

 王女はふふっと悪戯に微笑むと、頭巾を被り直して部屋から出ていった。
 才人は最後まで置いてかれっぱなしであったが、王女の言ったルイズの婚約者という言葉だけは衝撃の事実として記憶していた。

「なあ、本当にルイズには婚約者が居るのか?」

 ルイズは才人に目を向けずに窓から月を見上げていた。完全に才人を無視している。

「ハルケギニアの統一……ね。ふっ、それはわたしの目的よ! 何を勝手に横取りしようとしているのかしら。全く困った連中ね。わたしがこの世界の支配者であるのをわからせてあげないといけないわ!」

『ルイズ様、素敵です!』

『マスターの覇道、どこまでもお供いたします』

「ふふっ、それにアルビオンの秘宝を手に入れるいい機会かもしれないわ。アンには感謝しなくてはね」

 完全に悪役面でルイズは高笑いを上げる。その手には王女から託された手紙と『水のルビー』が握られていた。
 才人は無視されたり、ルイズが悪の高笑いを上げているのを心配したが、いつものことだなと思い返して気にしないことにした。

 才人は疲れきった体をソファに沈ませた。ふとテーブルに広がった手紙が気になって一枚手に取ってみる。そこにはルイズの綺麗な字が書かれていた。まだところどころ怪しいところもあるが、才人はほとんどハルケギニアの文字が読めるようになっていたので、その内容を把握することできた。しかしその内容を心が拒絶する。

「ルイズが他人を気遣うような内容の手紙を書くなんて……」

 多忙な王女を心配するような旨を書かれた手紙を見て、才人は驚愕に打ち震えた。
 王女とのやり取りでは、ルイズが余りにもわかりやすく感情を露にしているのに驚いたが、まさかルイズにちゃんと心を許せる人間が居るとはびっくりである。というよりルイズが心を許すほどの長期間付き合いを続けられる相手の忍耐力に脱帽だ。

 流石は王女。マジパネェっす王女。でもオーラがルイズと一緒だよ王女。
 才人はきっと洗脳したに違いないと結論を出した。あながち間違いではないのが恐いところである。

「でも、そっか……」

 ルイズに信頼できる人間が居ることに、なんとなく安心した。




 次の日の朝、才人は早朝の訓練を行わずに馬に鞍をつけていた。

「なあギーシュ、今日は一体どんな訓練をやるんだ? まさか騎乗しての戦闘とかなのか?」

 ギーシュは呆れ顔で答えた。

「きみは一体何を言っているんだい? 今日は姫殿下から直々に言い渡された名誉ある任務を遂行するためにアルビオンへ向かうんじゃないか」

「は? そんな話一切聞いてないぞ? アルマンは知ってたのか?」

「…………」

 隣で馬を撫でていたアルマンは立ったまま寝ていた。肩の上でアーサーも眠っている。

「立ったまま寝るとか……電車内以外で初めて見たぞ。ってそんなことはどうでもいいんだ。とりあえず任務ってなんだ?」

「本当に何もルイズから聞いていないんだね。任務の内容は、アルビオンのウェールズ皇太子から手紙を取り戻すことだよ」

「手紙? そんなもの送ってもらえばいいのに」

「わざわざ僕たちを送るぐらいなんだ、信頼できる者以外の手に渡っては欲しくないのさ」

「ん~まあなんとなく把握した」

 才人がようやく今回の旅の目的(というより外出するのすら知らなかった)を理解したところで、セフィラとフィーアを引き連れたルイズが現れた。

「準備はできたかしら?」

「もう準備万端だ。行くならさっさと出発しようぜ」

「まだ二人追加で来るわ」

 ルイズの言葉にギーシュは目を輝かせた。

「そういえばグリフォン隊の隊長にピポグリフ隊の隊長が護衛に付いてくださる予定だったね」

 魔法衛士隊は全貴族の憧れの対象だ。その中でも隊長となればまさしく現代に生きる英雄と呼べるぐらいに人気がある。そんな二人が護衛に付くのだ。喜ばないのは異世界出身の才人と、「守らせてあげてるのよ」という上から目線なルイズぐらいである。

 ルイズが「わたしを待たせるなんて良い度胸ね」と怒りを募らせていると、突然足元がぼこっと隆起した。もこもこと地面が崩れていく。
 ルイズはすぐに飛び退いた。
 次の瞬間、ぼこっと地面が盛り上がり巨大なモグラが顔を出した。

「セフィラ、やりなさい」

『了解です』

 短いやり取りでモグラの運命は決まった。
 ギーシュはセフィラがチャージを開始するのを見て、すぐに間に割って入った。

「や、止めたまえ! ヴェルダンデは出る位置を少し間違えしまっただけなんだ!」

「……どこかで見たことがあると思ったらギーシュの使い魔ね」

「そうさ! 可愛いだろう? ああ、ヴェルダンデ、どばどばとミミズを食べてきたかい?」

 ギーシュと巨大なモグラの戯れを才人は冷めた目で見ていた。

「なんというか不憫な奴だな」

 ヴェルダンデが何故かじっとルイズを見詰めていた。

「どうしたんだいヴェルダンデ? ルイズがどうかしたのかい?」

「主に似て女好きなのか?」

 ヴェルダンデは何を思ったのか、ルイズへ突撃を開始した。

「待てヴェルダンデ!」

「おいおいルイズは止めとけって。後悔するぞ」

 ギーシュの制止と才人の警告を無視して突っ込んでいくヴェルダンデ。

「薄汚いわね。モグラ風情がこの世界一の美貌を持つわたしに触れようとするなんて、拝顔の栄誉ですら身に余る幸運だというのに、身の程を知りなさい!」

 ルイズは懐に忍ばせていたソフィアを引き抜き、即座に爆発魔法を唱えた。
 そして、ヴェルダンデを側に居た才人ごとお空の彼方に吹っ飛ばした。

「メメタァァァァ!」

「ヴェルダンデ――――ッ!」

 キラリンとお星様になった才人にフィーアは言った。

「ルイズ様を侮辱したのは不味かったですね。ご愁傷さまです」

 ソフィア以上の良心を持つフィーアであっても、流石に遠回しながらもルイズへの侮辱を口にしてしまった才人を庇うのは無理だった。
 爆発音を聞きつけたのか、朝もやの中から二人の男が杖を構えたまま現れた。

「きみたち大丈夫かね!?」

 羽帽子を被った男――ワルドが集まった全員を見回す。才人が黒焦げになっていたり、近くでモグラが伸びていただけで特に問題はなかった。いや、充分に問題であるが学院内ではよくある光景なので生徒からしたら特に問題はなかった。

「敵の襲撃か?」

 ワルドの後ろで長大な剣を構える壮年の男――アドルフが警戒心を滲ませて周囲を見回した。

「大丈夫よ。使い魔共の粗相に対して罰を与えただけだから」

 ルイズは挑むような視線を二人の衛士に送った。
 ワルドは何かを思い出すように笑うとすぐに杖を納めた。アドルフはワルドの様子を訝しみながらも剣を背負っていた鞘に納めた。

「変わらないな、きみは」

 ルイズはワルドの言葉に「まさか胸のことを馬鹿にしてるのでは」という被害妄想がよぎったがすぐにいつものペースを取り戻して、

「ふんっ。たかが魔法衛士隊の隊長になったぐらいで、わたしをものにしようと思っているのだったら片腹痛いわ」

「もちろん僕はそんなこと考えていない。この旅で僕はきみに気に入ってもらえるよう努力させてもらうさ」

「楽しみにしているわ」

 周りはルイズとワルドのただならぬ空気に付いて行けず、遠巻きに様子を見守っていた。
 ルイズはワルドに背を向けて、出発のための準備に入った。馬に乗ろうとするルイズを見てワルドが歩み寄ってきた。

 ルイズはワルドにグリフォンに乗るよう勧められたが「だが断る」の一言で辞退した。それでも成長したワルドはヘタレを卒業したのか、更に言い募ろうとした。
 しかし現実は冷たかった。

『蛆虫、新しい世界を見たいか?』とセフィラに脅されたり、
『お久し振りですヘタレゴミクズ野郎様。あっ、間違えてしまいました。ワルド様でしたね。うふふふっ』とソフィアに地味に嫌がらせを受けたり、
「ロリコンは死ねばいいと思いませんか?」とフィーアに汚物を見るような目で見られたので諦めた。

 フィーアは後でルイズに「わたしはロリ要員じゃないわ!」とお仕置きを受けたが、痛みを快感に変える力の前ではすべてご褒美に変わってしまった。フィーアにとっては飴も鞭も甘いのだ。



 フィーアに罰を与えている横で、アルマンとアドルフが冷たい再会を迎えていたが、誰も気付いていなかった。

「父さん……」

「まさかお前が姫殿下よりこのような重大な任務を賜るとはな」

「ぼくはただ――」

「覚悟も持たぬお前が居てもただ迷惑を掛けるだけだろう」

「友達だけ危険な場所に行かせたくない。ぼくは少しでも皆の危険を少なくさせてあげたい」

「障害を払うとは言わんのだな」

「…………」

 アルマンはアドルフに睨まれて身を竦ませた。
 結局、アルマンはアドルフを納得させるだけの答えを返すことはできなかった。



 様々な問題を抱えつつも、一同はアルビオンへ向けて出発した。
 黒焦げになったヴェルダンデが、もぐもぐ~! と寂しげに鳴いて見送ってくれていた。ギーシュだけが思いっきり手を振って答えていた。

 ヴェルダンデは傷付き過ぎたために結局お留守番をすることになったのだ。その歴史の変化が恐ろしい事態を巻き起こすことに誰も気付いていなかった。いや、気付くことは不可能であった。しかし不幸もあれば幸もある。歴史の変化は何も一つだけではない。

 ――もう既にこれは「ゼロ」の物語ではなく、「異端」の物語なのだから。








●NGシーンあるいは王女さまの溢れる愛の物語

 王女はアルビオンへと出発した一行を学院長室の窓から見詰めていた。

「ああルイズ! どうか怪我などしませんように! 愛しのルイズ、あなたが傷付いたらわたくし生きていけませんわ」

 と言いつつも、本当に心配したいのは愛しのウェールズである。ルイズは最強だから死ぬなんて考えられないが、ちょっとどこか儚さというか弱さを感じさせるウェールズは心配でならない。

 ラグドリアンの湖畔で逢瀬をを交わした時、ルイズのように輝いていないのに一瞬で恋に落ちてしまった。今でもそれが何故なのかはわからないが、恋とはそういうものなのよ、とルイズに言われて最近は余り深くは考えないことにしている。

「姫、どうかご安心くだされ。あの者達なら必ずや無事に戻ってきますぞ」

「もちろんルイズが失敗するなんてありえませんわ! ただわたくしは――」

 果たしてあの方が説得に応じてくれるかどうか。彼は優し過ぎるから。たとえ現実に攻め込む口実になろうがならなかろうが、そこにトリステイン――アンリエッタへ被害が及ぶようなことがあればきっと断ってしまうのだ。

 今の王女なら、ラスボス疑惑のあるマスコットキャラに「魔法少女になろうよ!」と誘われて願いを叶えてもらってしまうぐらいに恋に酔っている。できることなら自らアルビオンへ赴いて、3話のポロリもあるよ! 的に死んで「まりもちゃ~~~~ん!」と叫ばれる状況になる可能性があっても赴きたい。ちなみに先輩はまりもという名前ではない。

 あるいは初号機のように暴走して、水の精霊とのシンクロ率400%も夢じゃないという感じに、一人でヘクサゴン・スペルを唱えてアルビオンで大暴れだ。
 恋する乙女の精神力が有頂天になった! 止まる所を知らない。レコン・キスタの相手など「9分でいい」と断言できるぐらいに最強になれる。それは確定的に明らか。恋如きでそんな強くなるわけねぇじゃん! と突っ込めば、王女はこう答えるだろう。

「あなたとは違うんです!」

 流石はどこかの国の元首相の台詞なだけあって、王女によく似合っている。どこかはどこかだ。日本だなんて言ってないんだからねっ!
 とにかく王女は暴走特急トミーのように今にも駆け出したいのだ。

 それかすぐさまアルビオンの貴族派に戦争を仕掛け、総指揮官を務めるどこかのポワチエさんを秘密裏に処理して、「わたくしはアンリエッタ王女だ、スキルニルにより通信回路が破壊された、緊急事態につきわたくしが臨時に指揮をとる」と指揮権を剥奪するのだ。そしてアルビオンから地上をルイズに爆発魔法で爆撃してもらい、「これから王国の復活を祝って、諸君にアルビオンの力を見せてやろう思ってね。見せてあげよう、アルビオンの雷を!」とやりたい。

 王女の妄想はどんどん膨らんでいき、現実に実行可能なぐらいに綿密に計画を立てていく。

「ふふふっ! もしもの時は覚悟するのですね、貴族派の愚か者共!」

 ふはは、ふははははははっ! とルイズと同じぐらいに魔王的笑声を上げた。

「オールド・オスマン、わたくしの素晴らしい計画を聞かせてあげますわ」

 \どや/という感じに言われた学院長は本能的な恐怖を感じて、断りの言葉を言いつつ席を立った。しかし、既に入口の前には王女が立っていた。

「知りませんでしたの? 王女からは逃げられない」

 まさに学院長からしたら「狂気に満ちた計画とかマジ勘弁ww」である。

「姫……そんな状態で大丈夫ですかな?」
「大丈夫よ、問題ないわ」
「ではもう少し落ち着きましょう」
「高揚感を抑えろと言うのですね、わかります」

 一応は静まってくれた王女であったが、すぐに何を思ったのか満面の笑顔を振り撒いた。

「わたしはずっと何か持っていると言われてきましたわ。そして今日、それが何かわかりましたわ! そう、それは仲間です。オールド・オスマンもわたくしの計画に協力してくださいますよね?」

 学院長は「どうしてこうなった」と頭を抱えた。
 何故か脳内でルイズの姿が浮かび上がり「わたしが育てた」と無い胸張って誇らしげに語っていた。教育? いいえ、洗脳です。
 王女は嬉々とした様子で、次々と革新的(というかある意味前衛的)過ぎる計画を語った。
 余りの恐怖に学院長は、寒気を感じた。

「――それでですね、まずはアルビオンとの貿易を完全にストップするわけですよ」
「ああ、そうですか。それはまた大胆な作戦を取りますな」

 体が震えるのを押さえ込み、鳥肌が服で擦れてくすぐったくて、それを掻いて誤魔化した。

「――そこからアルビオンの貴族共の一部に挑発を重ね、一部の穏健派には亡命の誘いを掛けて――」
「しかし……そんな……うまく、いくとは……思え、ませんな」

 その内本当に痒みに変わった。

「問題ありませんわ。わたくしの卓越した交渉能力を持ってすれば裏切りの一つや二つ、簡単に仕組めますわ」
「……かゆ、うま」

 もう学院長は限界のようだ。
 溢れる愛を策謀に変えた王女の話は、コルベールがフーケの失踪を告げにやってくるまで続くのであった。
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